この前、御堂筋線の梅田駅ホームを歩いていたら、小柄でスーツ姿の中年オヤジに出くわしました。2着1万ほどのくたびれたスーツ。顔に精気がなく、貧相なくらい痩せていて、何かブツブツ言いながらフラフラとしていました。独り言の怪人か?と思ったのですが、そうではありませんでした。耳から何かの線が出ていてそれがポケットに続いていました。多分、携帯電話っぽいものでしょう。それで会話していたんですね。近付いて来たら、その声もハッキリ聞こえました。
「そんなこと言われてもね。うちも困るんですよ」
先方と何かトラブっているのでしょうね。口調がギスギスしてるんですよ。こんなことも言ってました。
「そりゃ、事務手続きは大変でしょう。でも、それはそちらのせいですよね」
小柄な男は、精一杯背筋を伸ばして自分を大きく見せていましたよ。電話なのにそれって意味あるのかなと思いましたけどもね。やがて、その会話はクライマックスを迎えます。
「こちらにも考えがありますからね。はい、はい。なんですの、その言い方は?だから、こちらにも」
男は立ち止まりました。僕の目の前に。で、こう叫ぶように言ったんです。
「だ、か、ら」
お前は、滝川クリステルか!
「こちらにも。え?だからぁ」
男は、ついにキレました。
「ジムテツやて!えジムテツやて!何がジムテツや!ジムテツがどうしたんや!そんなん事務員にやらせたらええやろ!」
男はそう言って、耳から勢いよく線をはずしました。交渉決裂の瞬間ですよね。僕は笑いそうになりましが、グとこらえたんですよ。男はクルリと身体を反転させ、僕に背中を向けました。そして、両手をオカダカズチカみたいに大きく広げ、ホーム構内に響き渡る声で雄叫びをあげたのです。
「ジ・ム・テ・ツ!!ワアアア!!!」
怪人ジムテツがここに誕生したのでした。
でも、マジ、何があったんでしょう?気になりますね。